追記:2013年度のデータを入れて、新しい記事を書きました。(2014年10月30日)

宮城県内市町村の不登校のデータについて(2005〜2013年度)

 なお、下記の記事を作成した時点では、2012年度のデータは速報値であり、確報値のデータとは異なるところがあります。例えば、中学校の不登校出現率については、女川町は7.31パーセントで県内ワーストです。確報値については上記の記事からファイルをダウンロードしてご確認ください。

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 平成24年度(2012年度)の宮城県の中学校の不登校率が全国ワーストだったことから、これは震災の影響ではないかという報道がいくつかありました。

 震災は不登校に影響しているのでしょうか。宮城県についてのデータをもとに検証してみました。

宮城県の中学校の不登校率は震災前から高かった

 まず宮城県の不登校率を見てみます。データは、文部科学省の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」の数字を使いました。以下の表の単位はパーセントです。

平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度
小学校(宮城県) 0.31(25位) 0.32(20位) 0.34(17位) 0.37(13位)
小学校(全国) 0.32 0.32 0.33 0.31
中学校(宮城県) 3.02(5位) 3.02(9位) 2.92(8位) 3.14(1位)
中学校(全国) 2.77 2.73 2.64 2.56

 中学校については、震災前からも比較的不登校率が高かったことがわかります。小学校は年を追うごとに不登校率が少しずつ高くなっていいます。

 都道府県レベルの数字だけを見ていても詳しいことはわかりません。そこで、宮城県に対して情報公開請求をして、平成20年度から平成24年度までの市区町村ごとの不登校者数と不登校率のデータを入手しました。ただし、一部のデータについては非開示になっています(学校数の少ない自治体が非開示になったようです)。

 入手したデータをエクセルに入力したものを以下のリンクからダウンロードできるようにしています。入力にあたり確認はしましたが、転記ミスをしていないとも限りませんので、データの利用は自己責任でお願いいたします。
※上記の全国のデータと宮城県市区町村のデータとで若干数字が違いますが、もとにしている統計が「学校基本調査」か「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」の違いなのではないかと思います。また、宮城県のデータについては、平成24年度の数値は速報値ではないかと思われます。

(データの詳細はこちらのエクセルファイルでご確認ください)

宮城県市区町村の不登校データから見えてくること

・平成24年度の宮城県内市区町村の不登校率のワースト10は以下の通りです。
※仙台市は各区ごとに集計
※カッコ内は不登校率
※○印は沿岸部の市区町村

小学校
1位 川崎町(1.59)
2位 塩竈市(1.17)◯
3位 村田町(0.74)
4位 亘理町(0.59)◯
5位 富谷町(0.56)
6位 石巻市(0.53)◯
7位 仙台市若林区(0.53)◯
8位 大河原町(0.51)
9位 柴田町(0.43)
10位 仙台市太白区(0.41)

中学校
1位 塩竈市(6.80)◯
2位 女川町(5.02)◯
3位 大和町(4.45)
4位 大河原町(4.19)
5位 東松島市(3.95)◯
6位 仙台市宮城野区(3.87)◯
7位 村田町(3.86)
7位 川崎町(3.86)
9位 石巻市(3.81)◯
10位 角田市(3.60)

 沿岸被災地だけではなく、内陸部もランクインしています。地域としては、柴田郡(柴田町、村田町、大河原町、川崎町)の不登校率が高いことがわかります。

・塩竈市の中学校の不登校率が高いですが、震災前から高い水準で推移しています。

・震災後に沿岸部で不登校率が明らかに上昇しているのは、塩竈市の小学校、石巻市の小学校と女川町の中学校です。内陸部では川崎町の小学校も不登校率が震災後に上がっています。

・震災の影響が大きかった自治体の一つである南三陸町は、震災前も震災後も不登校率は低いです。

・震災の影響が大きかった県北部の5市町の不登校率の変化をグラフにしました。震災を境に増えているところ、減っているところ、横ばいのところ、それぞれです。

宮城県北沿岸5市町不登校率(小学校)
(クリックで拡大)

宮城県北沿岸5市町不登校率(中学校)
(クリックで拡大)

・宮城県全体では平成23年度から平成24年度にかけては中学校の不登校者数が103人増えました。青葉区を除く仙台市の4区でそれぞれ10名以上増加したこと、塩竈市で25名増加したことなどが全体での増加に影響しています。

・ただし、平成23年度は、震災の影響で授業日数が少なかったために、例年より不登校者数が少なくなっている可能性があります。授業日数が通常通りであれば、不登校者数も多かったかもしれません。平成22年度から平成23年度にかけては、宮城県の中学校の不登校者数は77人減っています。

まとめ

 震災の影響で宮城県での不登校が増えたかどうか、今の時点でははっきり言うのは難しいです。地域による差が大きいので、地域ごとに見ていくことが必要でしょう。適切な対策をとっていくためには、「宮城県の中学校の不登校率が全国ワーストになった→震災の影響に違いない」という予断を持たないことが大事だと思います。

 子ども支援団体や学校関係の方々が不登校の対策に取り組む上で注意を促したいことを二点挙げます(みなさんすでにご承知のことかもしれませんが、あえて)。

①宮城県の中学校の不登校率は、震災前から高かったという前提に立って対策をすること。

 県全体で見れば、中学校についてはもともと不登校率が高かったところに、震災の影響も若干加わったというのが実情ではないでしょうか(個別の地域で見れば、震災の影響の濃淡はあります)。むしろ、「これはきっと震災の影響に違いない」と予断を持つことで、適切な対策を取れないことがあるのではないかと思います。

 震災ストレスの心のケアも大事ですが、それ以前のそもそもの学校や地域としての不登校への対策はどうだったでしょうか。もしそれが不十分であったならば、不登校への取り組みで成果をあげている事例に学ぶことが必要と思われます。

②地域ごとの情報を調べた上で、それに合わせた対策をしていくこと。

 宮城県内の沿岸被災地でも、それぞれ不登校の状況は違います。中学校の不登校率で見ると、石巻市は震災前から高く、女川町は震災後に急激に増加、南三陸町は震災後も低いままです。また、塩竈市がワースト1位であることや、内陸部でも不登校率の高い地域があるのは、多くの人にとっては意外な結果だったのではないでしょうか。

 例えば、被災の程度の大きさから言うと、南三陸町で不登校の対策が必要なように思えますが、実際には塩竈市の方が深刻な状況です。思い込みではなく、実際の状況を確かめた上での対策が求められるでしょう。

最後に

 今回、岩手県や福島県のデータについては調べていませんので、他県の情報を調べるとまた違った傾向が見えてくるかもしれません。また、平成25年度以降に沿岸被災地での不登校が増える可能性もないとは言えません。地星社では今後も統計データを調べたり、関係団体・機関への調査などを通じてわかったことを公開し、課題の解決につなげていけるようにしていきます。