—焦らずに段階ごとに丁寧に対応していくことが大事なんですね。

結果としてそれが大事だと感じていますが、こういう風になるべきだと支援者として思うと、誘導してしまった部分もありました。でも無理に誘導したときは、一時話がまとまったように思えても、必ず無理が出てきて後で混乱しましたね。

逆に手間をかけて丁寧に進めてきたところは混乱が少ないですね。例えば、住民説明会を行うときには、その説明会に関係する全ての課、NPO、専門家もしっかり入れて事前会議で丁寧に話し合いました。伝えたい相手にどのように説明すればいいのかを考えるのもファシリテーターの役割だと思っているので、事前会議でそれを確認します。例えば、集合住宅に住んだことのない人たちの中には、もともとカーテンやテレビがあるものだと思っている人も少なくありません。また、スイッチひとつで入れられるお風呂の使い方がわからず一週間お風呂に入れなかった人もいます。そういう情報を事前会議で共有して、どんなふうに説明すればいいのかを一緒に考えていきました。

そういうことは、本当はサポートセンター支援事務所がやるべきことではないのかもしれません。本来であれば行政がやるべきことだろうと私も思っていました。でも行政の職員は課の仕事だけで、横串を刺せる人がいないわけですよ。そういう人はとても稀だし、変わり者だと思われますから。でもまったくいないわけではないんです。だから、そういう人がいた場合は、その人をバックアップすることを大事にしました。でも行政の職員はすぐに異動してしまうんですよね。そういう人がいなくなった時のギャップも嫌というほど見てきています。だからいい意味で期待しすぎないということは大事だと思っています。そうじゃないと今まで続けていないかもしれません。

でも、そのとき関わった人に変化が見られたらいいなとは思いますね。例えば会議をやったら板書をやったらいいんだなということを知ってもらえるだけでもいいですね。部署が変わって全く関係なくなっても、思い出せるような、潜在的なものに何かを投げかけられたらいいなと思っています。

2015年には復興予算もあと5年と言われていて、2017年になると現場でもいよいよ終わりが近づいてきたと感じて焦ってはいるものの、具体的には何も進みませんでしたね。支援事務所としても、他にも平時のいろんな事業や施策があるからそういうところに繋いでいけるようにと研修も多く行ったし、行政にヒアリングもしましたが、みなさん、自分も異動するしと先延ばしにしていき、結局2019年ごろにお尻に火がついたところはモデル事業に手をあげたりしていますが、それでもまだ何も考えていないようなところもあるのが事実です。そういうことにやきもきしながら2020年になり、復興庁の支援が5年延びたものだから、それをきっかけに「ま、いっか」みたいになっている感じがします。足がかりだけでも今年度つくってくれればいいと思ってはいるのですが。令和4年には全部なくなるわけですからせめてそこに向けて考えてほしいなと思いますね。

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