一般社団法人ReRoots(リルーツ)は仙台市若林区で被災した農家の支援や、農村コミュニティの再生の活動をしている団体です。これまでの活動と今後の展望について、代表理事の広瀬剛史さんに伺いました。(取材日:2020年9月30日/聞き手:布田剛、赤川泉美)

名称 一般社団法人ReRoots(リルーツ)
所在地 宮城県仙台市若林区 荒浜字今泉59-3
URL https://reroots.nomaki.jp/


被災者目線に立ち、当事者の社会的尊厳を取り戻す支援を

―3月11日の震災当日の広瀬さんご自身の様子とその後の行動などについて教えてください。

地震がきたのは、当時僕が働いていたお寿司屋さんの昼休み中でした。もう何が何だかわからない状態で、そのまま自宅近くの川内コミュニティセンターに避難しました。センターでは、町内会が中心となって避難所を仕切り、避難してきた東北大学の学生たちは自主的に避難所運営ボランティアを始めました。炊き出しやトイレの設置、物資の配布などのボランティアをして、避難所は一週間くらい慌ただしい状況が続きました。僕は、避難している住民の一人でした。

避難所が落ち着くと、自宅に戻る人が増えましたが、川内地区は水道がでず、スーパーもないため食料がありません。そこで、学生たちは周辺の300世帯くらいを一軒一軒周り、水や物資の供給ボランティアをしていました。勤務していたお店はもう再起不能だと言われていたので、仙台市のボランティアセンターがオープンすると同時に、沿岸部のボランティアに出かけていました。3月下旬になると、避難所も徐々に落ち着いてきたので、学生たちも僕と一緒に沿岸部の方に行くようになりました。

ReRootsの発足の引き金となったのは、市や民間ボランティアの活動に関する大学生たちの不満です。行政はマンパワーや物資などはたくさん揃っているけれども融通が利かず、被災者が困っているのになかなか動けない状況で、民間ボランティアは目先的支援という状況を見て、学生たちは被災を経験していただけに、気持ちとして納得できなかったのです。それなら自分たちがやろうというのが発足のきっかけです。

目の前のガレキの処理はもちろん大事ですが、とにかく生活を取り戻すような支援をしていかなければなりません。生活の回復には職場復帰が必要です。このあたりは農村地帯なので、職場は農地です。そこがどうしようもない状況では生活再建が難しいわけです。我々が意識していることは常に被災者目線に立つことです。農地のガレキを撤去する復旧作業から、再び農業をしていくための復興支援、それだけではその後、担い手不足や人口減少で過疎化することは予測がつきます。「復旧から復興へ、そして地域おこしへ」という長期的なコンセプトでReRootsは発足しました。

被災者といっても、地震津波が来る前は普通の生活をしていたのですから、元に戻れば自分でやっていけます。ですから何でもかんでも代行せず、あくまでも当事者の社会的な尊厳や社会的地位を取り戻す、そういう発想をするようにしています。そしてその住民たちと協働の道を歩くこと、それが学生たちの思いでもあります。

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