一般社団法人チーム王冠は、石巻を中心にして在宅被災者に寄り添い、個別のケースに応じた支援を続けている団体です。代表理事の伊藤健哉さんに活動の始まった経緯や現在の状況、活動の意義などについて伺いました。(取材日:2020年12月18日/聞き手:布田剛、岡本泰志)
名称 | 一般社団法人チーム王冠 |
所在地 | 宮城県石巻市流留二番囲82-68 |
URL | http://team-ohkan.net/ |
復興住宅にようやく入れた在宅被災者と話す伊藤さん
在宅被災者は支援の必要な被災者であるという認識がされていなかった
―チーム王冠の活動が始まった経緯を教えてください。
3月11日に自分自身も被災をしましたが、自分は動けるし、困っている人がいるならと動き始めていました。深く考えるよりも「やらなくちゃ」と突き動かされていった感じです。当時は大河原町で飲食店をやっていたので、被災者が避難所で大変な状態で過ごしているから炊き出しをしようと店のスタッフに言い、100人から200人分くらいのカレーを用意して、近くの避難所になっている山元町立山下第一小学校へ持っていきました。
自分たちが持って行ったカレーが、震災後、自衛隊からの配給以外の初めての炊き出しで、それまでは、おにぎり1個とみそ汁だけだったと聞かされました。しかし、届けたカレーが給食室にあった鍋に移され、500人分に薄められて、みんなに届けられるのを聞いて、なんて浅はかなことをしたんだろうと後悔しました。自分たちは500人分のカレーを、支援する側としては届けるべきだったのに。きちんと状況把握せずに届けると善意は届かないことを身をもって知りました。
また、その時はそのことの重要性を理解していませんでしたが、避難所の周辺に住む人たちには食べ物が届いていないことを知りました。避難所の人たちと周辺住民の方たちの間で食料を巡って棒切れを持って殺気立ち、怒号が飛び交う場に配膳係のおばちゃんが立会って怖い思いしたという話も聞きました。確かに、避難所は日を追うごとに毎日食料が届くようになり、食べられるようになっていきます。一方で避難所の周辺にいる自宅に避難している人には食料が届かず、日に日に食料が細っていきます。それが、「家があるくせに」「被災もしていないのに」と言われ、見過ごされていく在宅被災者の不幸の始まりに気づいた時だったのかもしれません。
それまで自分はボランティア活動をしたことはなく、そういうことは他の人がやることだと思っていました。しかし今回の災害は、目の前に困っている人がいましたし、その人を見なかったことにすることはできませんでした。とは言え、素人なので何をやっていいのかわからず、考えてもわからないので、避難所に行き、直接避難者の方全員から話を聞くことから始まめました。すると共通のニーズが見えてきたので、そのヒアリング結果をもとに、支援物資を買って届ける活動を始めました。
置いていくのでどうぞと言って支援物資を置いておくとすぐになくなり、それを見ていた避難所の管理人さんが、興味を持って声をかけてくれました。実はこんなことをしていますと話すと、君なら他の避難所を紹介してあげると言われ、次から次へと避難所に入っていくことができました。こうして炊き出しや、避難者へのヒアリングによる物資支援を繰り返しているうちに、徐々に協力してくれる人が増えていきました。