―仙台弁護士会との協働調査も行っていますが、どのようにつながったのですか?

2013年は、在宅被災者の気持ちを考えると、こうした調査をして、いろいろと公表することは、その人の尊厳を傷つけることになりかねないと考えていた時期でした。しかし、その後思い直して、2014年に被災した家を500軒回って、住宅に特化したアセスメントを実施しました。

また同じ頃に、『大震災と法』という本をたまたまウェブ上で見つけ、読んで目から鱗が落ちる経験をしました。これまで前例のなかった在宅被災者の支援にずっと取り組んでいましたが、被災者からも支援団体からも、「お前ら、何か勘違いしているのではないか。それは行政の真似事だ」といった非難を幾度となく受けてきました。しかしこの本では、泥出しをするだけがボランティアではなく、むしろ「自由な発想に基づいて、自由な活動でよく、自分たちのアイデアで行動していく」ものであると書かれており、これだと思いました。

そこで、相手が日弁連の名のある先生(※1)とは知らず、本の著者にメールを送ったのです。すると1か月くらいして、電話が来て、会って話をすることになりました。その中で、先生は「一人ひとりが大事にされる災害復興法をつくる会」をつくりたいと考えられていて、チーム王冠の活動がその会の趣旨とも合うことがわかってきました。そして、そもそも在宅被災者という問題を知らなかったということで、その後早速日弁連の先生たちが東京から石巻に来て現地を視察されました。そういった動きを受け、仙台弁護士会でも放っておけないとなり協働調査につながりました。2015年くらいの話ですが、仙台弁護士会が独自事業として予算をつくり、仙台弁護士会の弁護士が調査に回り、その案内役としてチーム王冠が動くという協働体制でした。そして、500件を2年間、5期に分けて調査することができました。

この調査は、本当にやってみてよかったです。自分たちは、身近な人に伝えることはできますが、対行政や対メディアなどには、なかなか伝えることができません。それに対して、弁護士は資格のある人たちであり、シーンに応じて、言葉を尽くして説明できる人たちでした。法律という根拠を持って話してくれて、これ以上ないスポークスマンだったと感じています。一緒にかなりの数の現場を回ったので、主張に関しても偏りがない、経験と知識と現場感を持って伝えてもらえることができました。すごく心強かったです。

ただ、これによって何かが大きく動いたかというと、そういったことはなく、不足感はあります。この協働調査と並行して、総務省の行政評価局の調査も入っていました。いろいろなお話の中で、在宅被災者の問題を整理できたと言われました。その後、成果として2020年3月に内閣府に対して勧告が出されました(※2)。まだ、現場に生かされている実感はありません。この勧告を受けてアウトリーチでの調査をしている自治体もありませんし。

東日本大震災後の在宅被災者の支援の経験は、常総での水害のときには間に合いませんでしたが、その後の熊本地震、西日本の豪雨災害などの災害においては「災害ケースマネジメント」という言葉が注目され、ひとりひとりの被災状況に合わせた支援がされるようになりつつあります。

※1 津久井進弁護士。災害支援法制度の専門家で兵庫県弁護士会所属。日本弁護士連合会・災害復興支援委員会委員長。
※2 『災害時の「住まい確保」等に関する行政評価・監視―被災者の生活し合件支援の視点から―結果に基づく勧告』

1 2 3 4