小粒同士が競って、助成プログラムに採択されるために目立つことをするということでは、本質的なものを失ってしまう
—話を少し戻します。面としての支援が必要ということでしたが、その理想像はどのようなものになりますか?
さっきの話で言うと、小粒さが目立っちゃっているから、面として課題をあげていかないといけません。地域性という言葉でごまかそうとしていても、支援のお金は本当に減っているわけだし、寄付金も減っていて、注目度も下がっています。もう少し連携して効率のいいことをどこかで打ち出さないと消耗戦になります。新しい東北の先導モデル事業(※1)だって競争ですし、相当数の団体が出しているわけです。
それはそれでいいけど、拾えるのは少なくて明暗が分かれます。暗のところをもう少し上げていかないと。それはみんなで考える必要がある。そういう意味でうまく声を拾い上げる組織が必要だと思っています。能力があり、他に頼らず進める人たちはよい。でも、そうじゃないところが声を上げるには、全体的な課題を見る調整機関が必要で、そこに本当は人がたくさんいるべきだろうなと。だから例えば、復興庁や県とかに、現場で拾ってきたこういう課題があるから、こういうお金の付け方をしてくださいということを言える団体が必要だと思います。
※1 新しい東北 先導モデル事業…国の復興推進委員会の提言を踏まえ、被災地における先進事例の育成を目的として、復興庁による企画競争の公募が2013年8月に行われた。全体の事業費は9億円で、464件の応募があり、10月に66件が採択された。
—その調整機関の役割は、役所などに政策提案していくというのと同時に、小さい団体の小粒のところを、連携させて効率化していくというイメージですね。
あともう1つは、各地の成功事例の情報を集めて、みんなで共有し考え、実行できるような役割ですね。
横文字が多いと、慣れない人は「何、イノベーション?」みたいな感じです。新しい東北とか新しいなんとかって、もちろん焦るのはあるんだろうけど、自然によって壊されたものを、自然じゃない、不自然なスピードで復興しようと言ったって、けっこう無理があるよなと思います。言語の成り立ちからして違うし、人材育成と言ってもそんなに簡単にできないから、もうちょっと待とうぜという気はしますね。もうちょっとゆっくりでいいんじゃないって。本当にじっくり考えて打ち手を打たないと、金の浪費が半端じゃない。単年度の使い切りの予算が多いじゃないですか。そんな準備できてないよって。去年のインキュベーション事業(※2)が最たるもので、誰が起業し、継続していたのだろう?
※2…2012年度に行われた内閣府の復興支援型地域社会雇用創造事業では、被災地での社会的企業の起業家育成を目的として、600名を目処に300万円相当を上限とした支援がなされた。