在宅被災者の生活実態についての公的調査が必要

―調査をして、周囲の理解がちょっとずつ広がっていますね。フェーズに応じて、支援の在り方や問題は変わった部分はありますか?

東日本大震災から10年が過ぎました。例えば8年目で災害で壊れたお風呂を直すことができたことに対して「先に進めてよかったね」ではありません。この解決されるまでの時間はものすごく長い。その間、家のお風呂は壊れたままで何も解決して来なかった。感覚が麻痺してそれが当たり前の状態だという錯覚に陥ります。支援者がアウトリーチをして、災害のダメージ査定を適正に行い、支援制度に基づいて伴走支援すれば、もっと早期に災害の復旧復興を実現できるのです。被災弱者の放置は憲法違反であり、立法の不作為を問題視しなければいけない段階に来ていると思います。災害救助法は70年前の、感染症対策の法律は100年前の時代がベースのもので、機能しているとは言いがたいですよね。今のコロナ禍がそれを証明しています。民間レベルではすでに災害弱者支援に関する考え方を提示しています。それができるようになったことが大きな変化だと思います。

忘れないでもらいたいのは、自分たちが調査できた数は、多くても5,000件。石巻の在宅被災は、少なくとも1万1000軒あります。一部損壊などを入れると1万3000から4000件。そこは、お風呂やトイレが使えず、雨漏りで床が腐っていて最低限度の生活ができていない状態です。県内全域で見ると、6万件あります。つまりまだ54,000件も知らないということです。これを被災地全体に広げていくとどうなるのか。どういう言葉を尽くしたら、この状況を日本中の人に理解してもらえるのだろうと考えます。


チーム王冠では在宅被災者の食料支援のために農園をつくり、野菜の栽培も行っている

―これからも在宅被災者の支援活動をされると思いますが、今後どのようなことが必要だと考えていますか?

震災から10年近く経っています。しかし、在宅被災者の生活状況などは今でも調べられていません。今からでもいいので、被災した基礎自治体は調べるべきだと思います。その調査データがないから、実態がわからず、根拠もないので、国や県など行政機関が全般的に動きません。宮城県の中で、せめてこの震災から10年という節目の年の内に、動き出す・知るということから始めて、被災者に寄り添いながら進めてほしいです。

我々の活動もスピード感はないかもしれませんが、風呂・トイレが壊れたままだった人が、王冠のサポートで公的な支援を得て、最近ようやくトイレは取り戻すことができたケースがありました。このように1件ずつ課題を潰していきます。こうした寄り添いと呼びかけを続けていきます。

それと、今後に向けては、在宅被災者の支援への資金援助があれば、もっと多くの人が関わると思います。避難所や仮設住宅の支援活動には助成金が数多ありますが、在宅被災者支援に関する助成金は、まだまだ少ない。チーム王冠は、他の団体に比べても、個人的に寄付をしてくれる人の割合が高かったのではないかと思います。それは、チーム王冠にボランティア参加して、在宅被災者のことを知った人それぞれが、これは途絶えさせてはいけない支援と実感したからではないかと思います。

繰り返しになりますが在宅被災者の現状を知り、その支援活動に助成金がでるようになれば、もっと多くの団体がその活動に関わることができ、在宅被災者支援のレベルも上がっていくと思います。

今後の支援を考える時に、前例にとらわれないボランティア団体が出てきてほしい。そして、それを支える組織があってほしいです。たとえ今までなかった新たな問題が出てきて、それを解決するための活動や団体が出てきても、そこにきちんとお金の支援が出るようになってほしい。そうした継続性、持続性が大事なポイントになると思います。

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