TEDIC(テディック)は、石巻で子どもの学習支援と居場所づくりをしている団体です。7月30日、代表の門馬優さんにお話を伺いました。

 門馬さんは震災当時大学四年生で、その年の4月から教職大学院に進学し、大学院生の傍らTEDICの活動をしていました。大学院を修了した2013年からは石巻専修大学共創研究センターの特別研究員も務めていらっしゃいます。(聞き手:地星社 布田、藤原)

名称 TEDIC
所在地 宮城県石巻市泉町2丁目7-24
TEL 070-6430-5120(代表)
URL http://www.tedic.jp

震災にかかわらず困難な状況に置かれている子どもたちがいることを目の当たりにした

−どういう経緯で活動が始まっていったか教えてください。

 僕自身が石巻の沿岸部の出身だったということもあり、3月末からつなプロ(※)経由で現地に入っていました。1か月間くらい携わっていましたが、もともと教育系のNPOにかかわっていて、教員を目指していたということもあり、子どもたちの状況は気になっていました。

※つなプロ…「被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト」の略称。被災地と関東、関西のNPOが連携し、災害弱者のニーズを見つけて専門性を持つNPOとつなぐ活動を震災直後から行っていた。

 避難所でお母さん方や子どもたちに話を聞いていると、当時学校が再開されていなかったので、勉強の遅れが不安だということや、生活リズムが違うので子どもだけで遊べる場所がない、子どもの居場所がないという話が多く、なんとかそういう場所をつくれないかということで、避難していた住民さんと一緒に湊小学校にキッズルームのような場所をつくりました。そこで子どもと踊ったり、遊んだり、本を読んだりして、また、中高生が一緒に勉強をする場所にもしていました。

 5月のゴールデンウィークが明けて、自分も大学院に戻らなくてはならなくなったので、東京に戻りました。しかし、自分の生まれ故郷がこのような状況になっているにもかかわらず、東京でのうのうと勉強しているというのが、自分の中で難しいなということがあり、なんとか自分の勉強とつながる形で、かつ持続的なやり方を考えました。自分の行っていた大学院は、教員になる学生しか進学せず、大学院推薦で教員採用が決まる大学院でした。そこで、ここの学生を週末に被災地に派遣することで、学生にとっても教員になるのに役立ちながら、子どもの支援を行おうということで立ち上げたのがTEDICでした。

 それから毎週土曜日、日曜日は東京から石巻に行き、避難所の頃は避難所で、避難所から移ってからは仮設住宅や公民館で、子どもたちの勉強をサポートしながらいろいろな悩みを聞くという活動をしていました。大学院生とTEDICと、あと学校で非常勤講師もやっていたので、三足のわらじで二年間やっていました。

−非常勤講師はどちらでやっていたのですか?

 埼玉県で1年、東京都で1年やっていました。高校の政治経済です。公民科の非常勤講師でした。月・火・木は大学院生、水・金は学校の先生、土・日はTEDICみたいな感じで二年間やっていました。

 話が前後してしまいますが、本当は最初の三か月間で止める予定だったんですよ。ゴールデンウィークが明けてすぐ、5月12日に団体設立して、6月から活動を開始して、本当は6、7、8でやめる予定だったのですけれど、8月の末に子どもたちを教えているときでした。

 中三生の男の子だったのですけれど、その男の子は震災が来てよかったみたいな感じのことを言うんですよ。なんでそんなことを言うのと訊くと、震災の前からその子は大変な状況に置かれていて、震災の前から不登校だし、お父さんはリストラされて、アル中になっていて、お母さんを殴っているし、それを見てきょうだいは家出をするし、家庭はめちゃくちゃで、未来もなくてという状態だったと。

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