しかし、課題も見つかりました。ムール貝は生産者の人たちが邪魔だからと捨てていたものなので、手をかけない。手をかけるという意識がそもそもないんです。また、そこの生産者さんは高齢で、牡蠣の養殖と出荷で精一杯。私が現地に行って、ムール貝を仕分けして詰めて、納品先に納品するというのをやらないとまわりませんでした。それをしていたら、私がまわらなくなりました。

 取引先からは、ぜひ来年もとすごく評判はいいんです。その飲食店に食べにきた飲食店さんからまたオファーが来るなど好評なんですけど、現地に専従を置かないと難しいと考えています。とても人手が足りないです。

※3…長面浦(ながつらうら)、尾崎(おのさき)は石巻市北上地区にある長面浦の周辺の地域。

―生産者の方でそういうのがちゃんとできるといいんでしょうけれど、生産者も元々やっていた牡蠣の方で手一杯ということですね。

 そうです。ボランティア等の人的支援が継続的に来てくれるのもあって出来ているというところもあるんじゃないかと思います。

―産業を支える基盤がない状態なんですね。普通だったら、まわりに住んでいる人が、暇なときにお手伝いしてあげるなどできるのでしょうが。

 現在長面浦はまだ人が住めない居住禁止エリアなので、漁師さんは離れた仮設住宅から通っています。なので住んでいる人がいないんです。

―尾崎以外ではどんな活動をしていますか。

 亘理や山元で、農家さんとか、事業者さんをサポートしているのが今の活動としては大きいですね。情報発信をしたり、チラシ等書類の作成や、販路開拓、といった代理店の様なサポートを行っています。

 人手不足は大きい課題です。例えば、「京子の万能だれ」や「南蛮味噌」といった加工品を製造している菅野さん。山元町で農家を営みながら仮設商店街に工房を構えています。日中は旦那さんと畑に行き農作業をするので、仮設商店街の工房を開店することが出来ないんです。遠方からもお客さんが来てくれるのですが、いつも休みなのでお客さんは商品を買えない。現在は菅野さんと当団体、他の支援者たちと工房がどうしたら活用できるのかを計画しています。

―取り扱ってくれているお店はあるのですか?

 今は、亘理、山元にある産直等です。つくった野菜は出荷しています。出荷規格外の野菜をうちで買取り、復興イベントで利用してます。

―被災地事業者の支援としては、物資提供や販路開拓、情報発信の支援、復興イベントでの販売ということですが、その他にはどのような活動をされていますか?

 あとは企業やボランティアのコーディネートです。例えば企業や組合等で、何かしたいけれどずっとできていなくて、この機会に被災地に行ってみたいというケースです。

 皆さん悩まれているのが、被災地へ行って自分たちに何ができるのか、何をした方がいいのか?ということです。そこで、すでに被災地にきたことがある知人等に訊くと、「一日だけ訪問し、あれこれするのは現地の手間もかかるから、現地に行って観光しながら物を買いお金を使う、また謝金を支払い現地団体やガイドに案内してもらい、被災地の今を見る方がいいんじゃないか」と言われることがあるようです。

 そこで当団体に相談が来て、被災地の沿岸部をご案内し、地域で活動する事業者さん訪問し交流をするのが多いです。当団体の課題は、大人数の企業研修等はまだ受入れる体制が整っていないことです。もっと多くの人に、被災地に来てほしいと考えています。今は他団体や知人経由で、こういう案件がきていますが澁谷さんの団体でやってくれませんかと依頼を受けるケースが多いです。

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