普通に生活していくことで元気になるのが、一番の心の健康につながる

—この石巻ノートは、例えばひきこもりの支援といったようなことはあまり前面に打ち出してないですね。普通に若者が来るところという感じですよね。

 そうですね。実際はなかなか出てこれない子たちはもちろんいっぱいいて、やっと週に1回ちょっとだけ来てくれたという子もいます。ただ、私たちがするのはその人の生き方を応援することなので、あまりそういう打ち出し方はしたくないなということはあります。

 疾患とか症状というより、本人のストレングス、強みはどこにあるのかを一緒に探すこと、それを活かせるかたちで伴走型の支援をすることが必要かと思っています。

—お医者さんのように診断するということじゃなくて、その人自身が持っているいいところなどを伸ばすような、そういう場所としてここがあるということでしょうか。

 その手助けをしたいというのが一つにあったんですね。例えば、一回お仕事に就いたけど病気になってしまって、また仕事を見つけていきたいという30代の利用者さんのライフヒストリーを聞いていくと、高校時代に心の不調があって、いじめにあうなどのマイナス体験を持っていることが非常に多いのです。そういう頃に良き理解者、支援者がいたら、もっと自信を持って何かに取り組めたかもしれないと話しておられたことが、とても印象に残っています。

 被災地にいる子どもたちがメンタル的に不調になっていって、何もサポートがないと社会参加が難しくなるということがあります。震災があったからといって、それはあってはいけないことだし、なんとかしたいという気持ちはすごくあるんですね。

 また、私たちは、ご飯がおいしいとかよく眠れるとか、人とのつながりがあって支えられたりとか、そういう普通に生活していくことで元気になるというのが、一番こころの健康につながると考えています。生活というところを基盤に、就労支援までしっかりやっていきたいというところです。

—働くというのはやはり重要なことですよね。

 ある高校の先生に言われたのが、例えばもし中退してしまうことがあったときに、学校外の所属先があって、そのような機関に就労支援をしてほしいということでつなぐと、本人とアクセスしやすい環境になるということです。高校から外れてしまっても、学校外での生活圏で、支えてくれる機関があってそこと本人がつながってさえいれば、関係を保っていくことができるし、就職後の様子なども聞くことができるのでとても安心ですとおっしゃっていました。

若者と高齢者一緒に取り組むものができると、お互いの力を発揮して相乗効果が得られる

—インターンシップの事業をやってらっしゃいますが、どのようなことをするのでしょうか?

 高校生のインターンシップは冬休みから始めるんです。バイトとインターンを掛け合わせたネーミングで、「バイターン」という有給職業体験プログラムですが、こちらのインターンシッププログラムを実施する予定です。

 ジョブマッチングを個別に丁寧に行うことで、卒業後に無業者にならないようまた、所属先が無くなることでひきこもりになることを予防する一環でもあります。また、社会人となるはじめの一歩のつまずきが、その後の人生に及ぼす影響は計り知れない。こういったことからも、「バイターン」の取り組みは、「若者の雇用」を軸に、地域と彼らを繋ぎ直していくことも担っていると思っています。

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