私たちがやっているのは、もっと概念的なところで、技術がどうこうじゃなくて、意欲を、本人のやる気を高めるというかかわり方です。働くにしても何にしても、自分からやりたいと思わないと続かないですから、それを育てるような福祉を目指しています。だから、何かやるにしても子どもたちの自主性を尊重しますし、やる気は、欲求がないと出てこないと思うので、できるだけ子どもたちにいろいろな世界を見せたいと思っています。例えば、映画を観に行ったことのない子がいるんですよ。テレビでもやりますからね。でもテレビと映画は違うでしょうと、映画に連れて行ったりしようかと。社会に出たくなるような、そういう取り組みを心がけています。

—世界に対しての好奇心を呼び起こすように、いろいろな経験をさせているのですね。

 そうです。また、例えば、自閉症の人って選ぶのがすごく苦手なんですって。だから、あなたはこれねと与えると、本人も嫌とも言わないではいって受け入れてしまう。すごくシステマチックで、効率的なんですけれど、私たちはできるだけ選ばせるんです。選ぶのは本人に苦痛だとは思うのですけれど、選ぶのに慣れてもらって、人生は選択の連続なんだよって言いながら、選ぶのに慣れてもらうようなかかわりをしていきたい。

 それはすごく時間がかかって、非効率なんですよ。すごく効率は悪いんですけど、必要なことだと思っているんですね。だから、教育的な福祉というのが学校の延長だとしたら、私たちがしているのは福祉的な福祉ですね。家庭の延長、おうちですることの延長を心がけていて、一緒におやつをつくったりとか、一緒にお出かけしたりとか、なかなか時間をかけられないような、おうちでやることを一緒にやるというのをしています。成果があまり目に見えにくく、わかってもらいにくいのですけれど。

—むしろそのような考えこそ、学校教育に取り入れるべきだと思います。最低限覚えないといけないことはもちろんありますけれども、世の中に出たら、障がい児に限らず、自分で意欲を持って自分で覚えないといけないことが多いじゃないですか。

 そうですよね。それが自立につながると思います。待つ支援が大事だなというのはすごく感じています。待つのってすごく大変なんですよね。やっぱり手を出したくなってしまうし。安全が守られるレベルで失敗をしてもらって、本人に学んでもらう。そういうことを心がけています。子どもたちはだいぶ変わりましたよ。とげとげしていた当初に比べて落ち着いてきました。

アクシデントの連続だけれど、信頼関係があるから最後には笑っていられる

—子どもが最初とげとげしていたとのは、震災の影響も大きかったのでしょうか?

 小学生は津波をあまり見ていないんですよね。支援学校も山手にありますし。だから、津波のトラウマというのは少ない方だとは思うのですけれど、避難所や仮設でのだいぶ抑制された生活が影響していると思います。今は、スタッフとの信頼関係ができてきたこともあるし、対処の仕方がわかってきたこともあって、相変わらずケンカなどのトラブルは少なくありませんが、子どもたちの表情は変わってきたと思います。

 すっかり平穏になったというわけではないのですけれど、いろんなことがあっても楽しいんですよね。アクシデントの連続なんですけれど、やっぱり信頼関係があるから、最後には笑っていられます。体の安全と心の安心さえ確保していれば大丈夫だなと。障がい者福祉にはコツがいると思います。スタッフのスキルアップが必要ですね。

—スタッフの研修はどういうところでやっていますか?

 私たちの理事長がCILたすけっとの方なんですけれど、その方が仙台で行われている研修の内容を教えてくれたりとか、あとは支援に来てくれていた大阪の団体が研修プログラムを組んでくれたりとか、そういうのが多いですね。2012年はいろいろなところに研修や見学に行きました。今はだいぶ子どもも増えまして、なかなか研修に出るというのが難しくなってきているのですけれど、まだまだ学ぶことは多いので、できる限り行きたいと思っています。

 研修や視察で現場に行くと、考える土台というか、心構えみたいなものが学べると思います。スタッフのかかわり方を見たりとか。もちろん制度に乗るためには、いろいろな事務的なものを揃えなければいけなくて、実務ももちろん習うのですけれども、一番現場に行って学ぶのは、知識というより、やり方のもうちょっと前の段階の心構えですね。

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