震災5年目からの組織基盤強化

 レラがこれからも移動困難者の問題に対応していくには、活動を継続させていくための組織基盤強化も重要です。震災後にできた多くの団体と同じように、レラはこれまで目の前の困っている人を助けることに力を割き、組織として活動基盤を整えることはどうしても後回しにしがちでしたが、震災から5年目となった今、本格的に取り組むことになりました。

 集中復興期間を終える来年度以降、被災者支援活動への助成金・補助金、寄付は一気に減っていくことが懸念されています。レラの活動もこれまでと同じ規模、同じ形態で続けられる保障はありません。そうした中、研修の一環として、活動の中で何を大切にしていくのか、団体の行動指針づくりが進められています。レラの代表の村島弘子さんは、「行動指針ができることより、指針をつくるのにスタッフみんなで考える過程が大事」と話しています。

 また、研修で移動支援にかかわる制度を学ぶ中、これまでは代表がやりくりしていた活動資金のことについてもスタッフそれぞれが考えるきっかけになったといいます。さらには、移動の問題の背景にある貧困や家族、障害、社会制度などのさまざまな要素にも目が向くなど、スタッフの意識も変わってきました。

移動困難者の問題を知ってもらいたい

 レラがこうした取り組みを行う一方、移動困難者の問題について市民は何ができるか。村島さんは団体外部からの支援に対して、こう話します。「以前は活動資金の支援をお願いしたかったが、今はそこではないと考えている。移動困難者のことを知ってもらい、問題意識を共有することで何かにつながる」

 移動困難者の背後にある課題に対応するには、行政や他団体などさまざまな主体との連携が必要です。そのためにも移動困難者の問題について、お互いの理解が進むようにしなくてはいけません。また、地域の人たちにこの問題を知ってもらうことも重要です。お互い様の精神で、身近な誰かをそれぞれできる人ができる範囲で面倒を見ることが、移動困難者やその背景にある社会的孤立の問題の解決につながります。そのため、レラでは行政や他団体に呼びかけてワークショップを行ったり、地域住民を対象とした福祉送迎講習会を開催するなど、問題意識の共有に向けた取り組みも始めました。

 震災からもうすぐ5年となるのを前に、団体のあり方や地域との連携をどうしていくか、新たな模索が続いています。

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