建設中の交ゆう館かなみ
障害があってもなくても誰もが自分らしく輝ける地域に向かって
—今後の展望を伺いたいのですが、交ゆう館かなみについて教えてください。
奏海の杜では、新しい拠点施設をつくり、2021年6月オープン予定です。コンセプトは障害があってもなくても集える学びと交流の場です。市民には障害者も含まれていて、生涯学習の場を障害のある方々がケアする場です。地域の方々にもぜひ彼らの魅力をわかっていただいて、お互いに生きやすい社会をつくりましょうというのが交ゆう館かなみに込めた想いです。
ゆうを平仮名にしたのは遊ぶ、気持ちが湧いてくる、優しさの優だったり、友達の友だったり、結ぶ、YOUというあなただったり、いろんな「ゆう」を感じていただけたらという気持ちで交ゆう館とつけました。
施設は放課後等デイサービス、障害のある子どもの居場所と就労継続支援B型事業所を併設していて、そこで市民講座ができるような交流スペースを設けます。障害のあるなしに関係なく人が関わっていただける場です。
子どもの施設と大人の施設が同じところにあるので、子どもにとってかっこいい大人像を近くで見られることで、自分で自分に合う仕事を見つけてもらいたいです。また、保護者の方々の支援力、家庭力を高めていければと思います。子どもにとって家庭は一番大事な拠り所なので、家庭を強くしたいという思いがあります。
もうひとつ大きな柱としては、生涯学習の場です。高校3年生のお母様の言葉で、「障害がある子どもたちは高等部3年を卒業するとすぐ就職ということになるけれど、世間一般では専門学校や大学へ行って自分と向き合う時間があって就職する。障害があっても学びたいと思っている子がいるんだ」という声がとても響きました。確かにそういう場所が地域にはまだないのです。私たちNPOは障害のある人も学べるような場所をぜひ提案していきたいと思っています。
場所は登米市の登米町という、みやぎの明治村がある地区にご縁をいただきました。順調に行けば11月初めには着工し、一期工事で就労Bと放課後デイの多機能事業所を予定しています。来年3月に工事が終わり、6月くらいに開所できる段取りをしていました。
また、ショートステイの施設を二期工事に行います。障害のある子どもたちのショートステイは、この辺にないんです。結構、需要はあるんですよね。冠婚葬祭とか親御さんの急な怪我など、ご家庭に支援する力が減った時に臨時的にでもサポートする人がいると思うと、親御さんの閉塞感は和らぐと思います。全部整うのは2022年3月の予定です。
—震災から10年の節目が近づいています。新たな10年に向かってこんなふうにつくっていきたい、目指していきたいことはどんなことですか?
一言でいえば、2017年に拠点を集約してから子どもたちと一緒にやってきた活動を地域に広げることだと思います。子どもは柔軟で変わりやすいんですよね。だけど、これから関わろうとしている人たちは今までに何年も引きこもりだったり、大人で自分の性格が出来上がっている人たちなので、もしかすると時間がかかるのかもしれません。
ただ、この活動を始めたときに最初に関わったのは障害のある大人だったんですよね。地域で自立して生きる姿をつくりたいと始めた団体です。「障害があってもなくても誰もが自分らしく輝ける地域」に向かっての大きな一歩だと思います。10年か20年かかるのかもしれないですけれど、今のことをコツコツやっていけばそこにつながっていくという見通しが持てているので、自信を持って歩んでいくんだろうなと思います。