自分で声を上げられない被災者の声なき声に気づくこと

—この10年を振り返り、特に感じている課題はどのようなものですか?

自己責任論について思うところがあります。声なき声に気づくということです。制度やサービスは、自分で申請しないと活用できないわけです。被災者の中にも大勢いましたね。自分で整理できなかったり声をあげられないと、「あの人は何も言わないし申請もしないから大丈夫でしょう」という判断になる。でもそうじゃないという話をあちこちでずっとしてきました。声を上げられない人たちのことに多くの人が目を向けられることが民主主義や先進国なわけです。でも現実、取り残される人が多いんですよ。その話を一番わかってほしいNPO、社協、行政になかなか伝わらないなというのが実情です。

うちの事務所もその問題について気づくのに相当時間がかかりました。みんなで勉強会などをして、社協や行政に在宅被災者について話すと、「一度は訪問したりアプローチするけど、相手が住み続けたいと言ってるからそういう状態になっている」と言います。すべての問題について、本人がその問題を言えるかと言ったら言えないわけですよ。それを本人がそう言ってるからいいだろうということにしてしまっていいのかということです。そこに自己責任論とかを持ち出す人とかいて。

広域避難者についても、「自分で外に出て行ったんでしょう」という自己責任意識は強かったですね。移住した先でこれから生活していくことがわかると支援先ではなくなるので、移住した先でコミュニケーションが取れずに孤立している人もいます。平時の地域づくりの課題と捉える人もいるようですが、引き続き被災元の都道府県が関わっていくというスタンスが必要だと感じますね。ふるさと宮城と避難先の間に入る民間の支援者の確保などを続けてほしいと思いますね。

—支援事務所として広域避難者へのサポートはどのようにしているのですか?

避難先の県で独自に交流会や相談会をやってくれているところがあって、そういう機会に顔を出したりしています。あとは、3年前から福島県の広域避難者支援事業のアドバイザーを務めているので、福島の事業に携わる中で、宮城県の広域避難者も支援しているよというところが見えてきて、拠点の人から情報をもらったりもしています。今後は、家探しや就労のサポートとかそういうこともやっていかなければいけないと感じますね。年数がたてば、広域避難者という意識も薄くなっているので。その辺を意識しながらサポートできる人がいなくなってしまうのが心配です。

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