そのとき、たまたま学校の養護の先生から、保健室登校が増えているようだというお話と、ある高校で就職率はとてもよかったのだけれども、離職する子どもたちが多いというお話を聞きました。家庭環境や、周囲の環境が変わったことで歪みができていて、子どもたちがすごくその影響を受けています。例えば、本当は大学に進学したいのだけど、家庭の事情でできないから働かないといけない。やむを得ず働くけれど、やっぱり自分のやりたい方向ではないし、うまくいかなくて辞めてしまったりしています。
若い人たちのお話を聞いていくと、本当はこういうことをしたいとか、すごく親に反抗しているけど本当は家族が心配だとか、本音をいろいろ語ってくれますし、やっぱり子どもたちは将来のことを含めて一生懸命いろいろなことを考えているんですね。そういう子どもたちの話を聞いていくうちに、ここにきちんと場所を設けて、しっかり基盤をつくって継続性のある事業をしていかないといけない、震災の被災地の支援ではなく、地域に根ざした、みんなが生活者として生き抜いていくためのサポートをできる場所でなければいけないと思って、石巻ノートを立ち上げました。
—石巻ノートは、主な対象は高校生ですか?
実際に来てみたら中学・高校の方が問題を抱えているケースが多いということがあり、中高生を主な対象でやるような形にしているところです。
中学生・高校生に絞っているのはもう一つ理由がありまして、思春期の世代の支援機関などの社会資源が少ないことです。医療的な側面で見ると、思春期は、こころの健康の問題を抱えやすい時期でもあり精神疾患の好発期にもあたることから、早期に介入して支援をする必要性があるのですけれど、そこの支援はあまりないということがあります。
—主な対象が中学生・高校生ということで、学校などとも連携してやっているのでしょうか?
はい、そうですね。学校のスクールカウンセラーや養護の先生、進路の先生と連携するという形です。石巻市では、スクールソーシャルワーカーの支援が学校に必要とされています。本人に対するする支援を一生懸命しても、家庭に戻ったときに例えば、親御さんの失業による貧困やDV、アルコール依存などの問題があると、本人がその環境にいる限り、リカバリーが難しいということがあります。そこで、もっと裾野を広げて、家族支援も含めたソーシャルインクルージョンの視点で捉えていかなくてはいけないと思っています。
来年度以降スクールソーシャルワーカーを配置する学校が増えてくると思いますので、私たちもそういう役割を担えるようになりたいと考えています。子どもたちを支えるには、学校と地域がもう少し密接になること、そこに私たちがハブ的な役割を果たせるといいのかなと思います。