養成講座はみんな仙台圏で、山元からだと仙台圏に行くにも時間がかかるから行かないですよね、主婦の人が多いのに。では、山元で養成講座をやろうかとなって、なるべく地域の事業所の人たちも巻き込んで、場所提供してくださいとか、講師やってくださいとお願いしています。最終的には就職につながることを意識しています。普通の事業所だとそこまでやらないと思うんですけど、資格取得から就職にどうスムーズに移行するかを考えて、地域の事業所にかかわってもらうようにしています。
また、協同組合みたいな感じで、みんなで仕事を起こすということも考えたらどうですかということも、介護研修の中に入れ込んでいます。生活クラブの方は自分たちで仕事を立ち上げるという習慣を持ってるんですよね。こっちは雇われる人は雇われる人で、立ち上げる人は別であるという感じなので、そういう話をところどころ入れています。
—生協でのつながりもありますから、一次産業の支援はわりと中心的になる部分はあったと思うのですけれども、地域の実情に応じて、在宅被災者の支援ですとか、介護の研修とか、一次産業支援以外のものもやっていますよね。
地域の中に課題は山ほどあります。それに対し私たちが持っている資源の中で、一番投入しやすいものを投入しているだけなんです。介護に関して言うと、二つの生協が社会福祉法人を持っていて、介護系の事業も大きくやっていて、自前の講師がおります。だからいろいろ聞いて、例えば放射能問題もあれば、産業問題もあるけれども、福島では一次産業は手を出せない。身の丈に合わない。まちづくりもうちは専門じゃない。でも介護職の養成だったらできるねということで。だいたいそういうパターンです。
基本的にはあまり前提を持って折衝しません。これ困ってますよね、みたいな感じで行くのは極力控えたいと思っています。海外大手NGOがプレハブをばんばん置いていきましたが、必要ですよねって聞かれたら必要ですって答えるじゃないですか。ただですから。じゃあもらっておくよと(笑)。そういうのはしたくないなと。
—予断を持たずに現場に行って、話を聞く中で本当の困りごとを聞いて、その中で財団としてできることで、役に立つことをやっていくということですね。
主体性をどっちに持つかというのを大事にしたいですね。プレハブを設置する人がプレハブを欲しそうな人にニーズを持っていって、ニーズを引き出して、提供する。もちろんいい支援だったかもしれないけれども、支援―被支援の関係性が固定されます。それよりは、相手方に主体性をなるべく持ってもらいたいというのはありますね。支援のし過ぎによって、結果的には相手の力を奪っていることは往々にしてあるので、その見極めがすごく難しいですけれど、そのへんの感覚は持っておきたいですね。
—今までも、相手の主体を引き出すということを念頭において支援をしてきたと思いますが、これまでやっていく中で、依存されそうになったことはありましたか?
もちろんあります。今もないわけじゃないんですよ。こちらのかかわり方がうまくないと、それが続くこともありますね。そこはところどころでスタンスを伝えていかなければいけないと思っていて、けっこう難しいですね。うちは薄いサービスをたくさんするというのではなく、出会いの中で長くやろうというスタンスなので、出会いを探しながら、これだという人や地域に関しては厚く支援するという感じです。
—支援先との信頼関係のつくり方も、相手のことをよく聞くというのが基本になるのでしょうか?
そうですね。だからうちのスタッフは汗を流しに行くし、農家さんからハウスの手が足らないと言われれば、長靴でトンカチを持ってハウスを一緒にやります。そうすると、休憩の合間なんかに、実はこの地域をこんなふうにしたいんだよねというのが出てくることもあります。そういう声を聞きながら、次の手を一緒に考えていきます。