にこワゴンの様子。子どもたちが地域に出向きコーヒーを配る
地域に出向き、地域との関係性を築いた
—2017年に拠点を集約して登米に移転しましたが、どのような変化がありましたか?
まずはスタッフが変わろう、地域にどんどん出て行く活動をしようと、活動の柱を3つ立てました。1つ目は子どもたちの意欲向上を図ること、2つ目は地域の人と出会う場を作ること、3つ目はお互いに双方向の関係を作ることという3段階に分けて活動を組み立てました。子どもたちの意欲を向上させるプログラムを作ろうとしたのは、私たちが与えるのではなく子どもたち本人に見つけてほしかったからです。好きなことをやると一番意欲が高まるということで活動をしていました。
2018年度の後半から、にこワゴンを始めました。これは地域との出会いの場を作る活動で、コーヒーをスーパーや役場、社協で配るというものです。「コーヒーどうぞ」「ありがとう」というコミュニケーションの機会を作りました。役場や社協に行くと、福祉の気持ちのある方々がほとんどなので、絶対に受け取ってくれるんですよね。受容や肯定されることばかりだったのですが、社会一般はそうではなくて、やはりノーという人もいます。それがどう分かってもらえるかなと思いました。そこでスーパーの店先でにこワゴンをできないかお願いしたら快諾いただいたんです。そこでコーヒーを配ると要らない人もいるんですよ。避けたり、いりませんという方もいらっしゃって。
それを最初から防ぐのではなく、あえて本人たちに経験してもらう。そうすると子どもたちから「あ、いらなかったんだね」という反応が返ってきて、自分でよい距離を見つけていくんだなと思いました。それまでこちらがよかれと思ってしていることが、かえって彼らの生育、育成を阻んでいたのではないかと実感しました。にこワゴンを月1回続けていたら、だんだん認知されてきてお客さんから「この前もいたね」と声をかけてもらったり、だんだん地域に浸透していったのを感じています。今年2月からコロナで行けていませんが、すごくよい地域参加だったと思います。
また、私たちが出ていく活動ばかりではなくて、こちらに来てもらう双方向の関係がどう結べるかということで、「かなプロ」を地域の人にお願いしました。奏海の杜に携わってくれるプロで、かなプロと呼んでいます。地域の人の「ちょっと得意だよ」という分野でボランティアに入ってもらっているんですね。今は芸術、音楽、英語、気功と得意分野で子どもと関わる活動をその方のペースでやってもらっています。
石巻や仙台から来てくれる人もいて本当にありがたいです。スタッフだけでやっていると活動はだんだん小さくなっていきがちですが、新しい人が風を入れてくれることでいつもフレッシュにプログラムを考えられますし、新しい活動も生まれてきたりして、とてもいいなと思います。今後どんどん地域の人たちに入ってもらって、子どもたちを地域で育てるという感覚を広げていけたらと思っています。