災害が起こる前の平時の防災講座で傾聴を取り上げてほしい

―東日本大震災を経験して、のちの方たちに伝えたいことはどのようなことですか?

傾聴は人間関係の基本です。特に避難所の責任者には学んでほしいと思います。東日本大震災のとき、避難所の責任者で傾聴の心得を持っていない人がいました。ぜひ必要なことなので、傾聴ができるようになってもらいたいですが、災害が起こってからでは遅いので、防災講座などの中で取り上げてほしいと思います。傾聴を知っているのと知らないのでは全然違います。傾聴の会でもみんなに知ってほしいと思って普及啓発に努めていますが、まだまだ足りません。まだ傾聴を「何と読むのか」との問い合わせもあります。

―傾聴活動を行う中で、地域や行政との関わりはどのように築いてきましたか?

地域に傾聴を広めるために養成講座をやってくださるのは社会福祉協議会が多いです。自治体がやるというのはあまりありません。養成講座は最近コロナ禍で中止していましたが、10月以降は増えています。要望があれば地域に出ていって講座をやっていますが、丸森の社会福祉協議会から団体で受講させてくれと言われたとき、5、6人ということなので、地域に出向いて養成講座をやりますと言ったら、仙台で行われる講座を受講したいという意向でした。仮設住宅を個別訪問する職員を採用し、まずその職員に傾聴の勉強をしてもらいたいようです。

有料でも受講するという士気の高い人の中で学びたいということがあるのだと思いました。全て無料でやっていくということではなく、お金を頂いてやるというのも大事なことかもしれないですね。台風19号の水害で丸森はまだ被災者が仮設住宅に入っていますし、傾聴の会としても丸森にボランティアに行こうかなと思っています。

行政は、市によって対応が違いました。困ったこととして、情報を出してくれないので全く手探りで、直接、避難所や仮設、復興住宅に行ってお茶会を開きたいととお願いするというパターンもありました。情報がもっとあったらスムーズに入れるのにと思います。また、被災者向けのお茶会に対する助成金を出している自治体もあったので、そのことを聞きに行ったら、これは地域の人がやるもので、法人がやるものではないと言われてしまったということもありました。

―組織として任意団体から法人と形態を変えましたが、組織運営の中での課題はありますか?また、今後の展望を教えてください。

組織としては考え方、進め方はいいのですが、事務スタッフを育成してこなかったことを反省しています。会員が多いので、自分たちで分担をしてやっていけばいいという考えをしていましたが、逆に会員が多いと事務がしっかりしていなければだめだったのです。事務の取りまとめの部分はボランティアでは厳しいです。今後は認定NPO法人を取得して基盤づくりをしないといけないと思っています。

法人格を取ったことは活動の転機になりましたね。法人だと助成金申請などでは信頼されるようになりましたし、復興大臣に来ていただいたこともありました。また、仮設住宅でのお茶会は、初めは他の団体と一緒にやっていて、次第にいろいろな意見があって一緒に活動することが難しくなりましたが、法人化してからは独自に動けるようになりました。

今後の展望ですが、被災者支援はまだ継続していきます。一方で、活動の原点である自死予防という意味で、電話相談を充実させたいです。コロナ禍でどこにも出かけられないという中で、話を聞いてほしいという人は多くいます。いのちの電話がつながらないので、傾聴の会にかけてくる人もいます。多くの会員を活かしていく場として、電話回線を増やし、電話相談員も増やしていって、SNS相談などもやっていければと考えています。

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