人が往来するしくみや人が定着するしくみをどのようにつくるか
—今の中心のプロジェクトはその田植えやさつまいものプロジェクトになりますか?
中心というとまだ復旧の方ですね。今、過渡期なので、バランスが難しいんですけれども、来年に向けて復旧支援ボランティアは終わりになりますから、ひまわりやサツマイモのような人の往来するプロジェクトをつくりながらも、本格営農再開も支援していきます。
今この地域が抱えている問題は大きく4つあります。1つは農業再生、2つにコミュニティ再生、3つに景観再生、4つめが防災です。この問題に関しては、去年の夏に基本的な調査は終わらせて、どういう問題点があるのかというのは役所に行って調べ、農家の人たちからも行く先々で話を聞いています。
(広瀬さんが中間報告書を取り出す)
—これはReRootsで調査を行ったのですか?
そうです。去年まとめた中間報告で、これが復興に向けての叩き台になります。農業の再生というのはまず圃場とかビニールハウスとか機械みたいな生産設備を回復することと、担い手である営農形態をどうするかということが大きいんですね。
生産設備に関していうと、一農家がやろうとすれば5、6千万円の投資をしないと無理です。農家の平均年齢65歳ですから、やれる人はそんなにいない。しかし、中にはいます。個人で再開している人たちで、その人たちは凄いプロですね。野菜もすごく上手ですし、腕一本で生きている人たちです。
そうでないと集団化、もしくは法人化となってきます。行政の方針で、集団化もしくは法人化して6次産業化ということに関しては補助金がたくさん出ます。専業農家に言わせれば専業農家潰しとのことですが。集団化すれば、無償で機械のリースがあったりですとか、ビニールハウスの8割補助があったりします。
今はそういうふうにして営農形態を整理していく過渡期で、だいたいまとまってきているのですが、ここでいろいろ問題点が見えてきます。集団化するところは補助も出るし、生産設備を回復していくのですけれど、集団化は大規模化するということなので、機械や設備も大きくなるのに担い手が不足しています。それから圃場を整備していくわけですが、いまは復旧支援ということですから、田んぼにしても畑にしても元通りに回復する。田んぼもようやく3分の2くらい回復したのでようやくつくっていますけれども、そういうところを全部つぶして、大規模区画整理が始まります。そうすると自分の田んぼがどこにいくかわからないんです。だから今つくっている田んぼはあまり意味がありません。復旧予算と復興予算のお金の出所が違うのです。
本当は、大規模化するんだったら初めからそういう工事をやればいいんですが。自分の田んぼがどこに行くかというのは揉めますけれどもね。しかし問題は、集団化しても、うまくいくところとうまくいかないところがはっきり分かれてくることです。
集団化するとはいえ、圃場の生産計画とか、機械の管理維持とか、経営におけるマネジメントとか、人をそれだけ使うわけですから、経営者として総合的能力がなければだめですし、営業できなければつくったものが売れません。それを農家がいきなり集団化してやれと言われても難しいんですよね。リーダーがいるところはうまくいきます。そうじゃないところはばらばらになります。
そこから法人化して、6次産業化して、競争力のある魅力ある農業をつくるというのが行政の方針です。しかし、法人化していけば当然市場競争の波にもまれていきますし、6次産業化してなにか商品開発したところで、当たればいいですけれど、当たらなければ倒産です。それをできる農家は確かにいます。失敗する農家もいます。
そういう中で、農家も法人化できるような能力のあるところしかやりません。あとは集団化しないと維持できないというのがあるのですが、ある集落は集落営農組合として集落としてやるからひとつまとまるんですけれど、あるところはグループが分かれたりしています。やっぱり伸びていくところと伸びていかないところとがありますから、今後5年10年で、きっとバランスが崩れていくと思います。そのような中で、新規就農者が入るところと入らないところが出てきますので、ここをどうやって僕らが媒介していくかというのが大きな課題ですね。