—生活困窮者の方の利用はどうでしょうか?
基本的に送迎している対象者の方は、独居または夫婦二人暮らし高齢者の割合が多いんですね。だいたいみんな豊かではないです。独居または二人暮らしで仮設に住んでいる高齢者だから、だいたいあまり持っていない人が多いです。無年金の人もいます。
利用を受け付けるときは、経済状況という聞き方ではなくて、タクシーで行くのは大変ですかという聞き方をしています。それで、年金だとやっていけませんというお返事であれば、経済的に大変らしいと。
—移動支援以外の、違うジャンルのNPOとの連携などはありますか?
専修大での全体会がなくなってしまったあとは仮設支援のメーリングリストには入れてもらっているけれども、実際に仮設支援連絡会に行けたのは、1回か2回です。結局行けないままで。
あとは去年の移動支援連絡会(※)、あえていろいろなジャンルのところに声をかけたんですよ。私たちの目的の一つに、いろんなジャンルのそれぞれの視点から同じ問題を見て、それぞれ多角度的な取り組みをするというのがありました。移動支援とは直接は関係がないけれど、どこかで関連がある障害者支援、仮設住宅支援、仮設住宅自治会長さんとかいろんな人たちです。
※移動支援連絡会…レラが主催し、石巻市、石巻市社会福祉協議会、タクシー協会、仮設の自治連合会、障害者支援団体、仮設支援団体などを参加者として、2012年度中、移動支援の会議を月に一回開催していた。
それから、去年受けたやっぺす起業支援ファンド(※)でも、さらに移動支援と関係のない異分野の、被災後で起業しようとしている人たちとのつながりが一気に広がりました。ここでNPO的ではないような人たちとのつながり、知り合いが増えたというのはあります。
※やっぺす起業支援ファンド…石巻市やその周辺地域における社会的起業の支援プログラム。内閣府の復興支援型地域社会雇用創造事業の一環で実施された。
—これまでの活動の中で一番の成果と考えているものは何ですか?
移動手段のなかった人に移動手段を提供できた。移動に困っていた人が移動できたということ。これに尽きます。新しい公共支援事業の報告書にもとにかく書いたのが、移動する術を持たなかった人がこの補助の期間内に移動手段を失わないですんだということだけでも、成果として計り知れないものがあると。そういうことがありますね。
—今日同乗させていただいて思ったのが、移動しなければ生きていけない世界になっているということです。車で移動するのを前提とした社会インフラですよね。
一人一台ですもんね。これは石巻に限ったことではないですが。車依存社会が大災害にあうとどうなるかということですよね。移動に困るからバスを出すというのはまずもって無理です。
レラである必要はなく、困っている人が困らなければいい
—最近オンデマンドバスっていうのがあると聞いたのですが。
デマンドはいい形だと思います。レラは一日100人、月に2000人も送迎しているというと大きな数字に聞こえますが、個別に見ると、ここに一人、ここに二人、10時と2時とかそういう世界です。そこに定時定路線のバスをまわしたらどうなるかというと、まわす前から大赤字確定です。しかも、バスだと結局乗れない人もいます。
ひとりふたり乗せているバスが走っていると、空気を運んでいると言われてしまいます。だったらレラみたいに、来てほしいというときだけ行くという方が、無駄がないし、安上がりなのではないかと。大きいバスをまわす必要はないんです。人数が多くないから。人数は多くないけど、すごく散らばっている。住んでいるところも、目的地も全部違っている。それに合わせたお金のかからない赤字になりにくいやり方考えたらどうなるのかなって。
石巻に乗合タクシーというすごく素敵な制度がもともとあるんですよ。でも、あまり知られていなくて。乗合タクシーの案内を見せてもらったのですが、とてもわかりにくいんです。