あと、農業の再生は圃場と営農形態を再生していくとともに、農村としてのコミュニティを再生していかないと維持できないんですね。集団化するということは、例えば10軒あった農家を3軒にまとめるということです。そうすると、残りの7軒はもう農家をやらないから他に仕事を探さないといけなくなります。ということは、ここから出ていくんですね。そうするとどんどん農村が崩壊していくんです。過疎化、限界集落化が進んでいく。日本の中山間地はそういう地域が多くなってしまっているのが現状ですよね。若林区もそうならないか心配です。

 当然後継者はいなくなってくるし、新しく農村に入ってくる人もいなくなってくるので、集団化した例えば3軒の農家は農業をやっているけれども、集落としてはどんどん崩壊して、農業そのものは衰退していくんです。今行政が取っている法人化、集団化の道というのは農村を衰退させる危険性が高いといえるんですね。農業どころから農村コミュニティがだめになるので、そこに対して人が往来するしくみや人が定着するしくみをどのようにつくるかというのが課題です。

 行政はTPPなんかもあるから、競争力のある農家をつくらなくてはならないと、そっちにばかり動くので、生産性の高い農業にしか着目しません。でも農業は農村を基盤として発展していき、農村の発展を考えないと農業は維持できないですから、今この地域の復興というのは地域全体の構想がなく、バランスが悪い状態で進んでいると思っています。

 大きく4つの問題について、地元の人たちと話しながら、意見を汲み取って作り上げていくというのが今後重要です。だから今年いっぱいで復旧支援を終わらせて、来年は地域の本格営農再開とコミュニティづくりと景観づくりといったことについて、どうやって地域として取り組んでいくかを話し合っていくような機会が必要です。そうはいっても、集落単位で違いがありますし、集落内でもいろいろありますから、そんなに簡単にいかないんですけどね。

 その一方でサツマイモを植えたり、田植えをやったり、今やっているプロジェクトを続けていきますけれど、過渡期が必要ですね。本格営農再開するまで、圃場が大規模化されるのがあと3年くらいかかりますから、本格営農再開は2、3年先になります。本格営農再開しても、軌道に乗るまでは数年はかかりますからね。その間にもう10年経ってしまいます。65歳の平均年齢があっという間に75歳ですから。今から5年くらいの間で、復興と地域おこしのプロジェクトをどうやってつくっていくかというのが地域的な課題になっています。

 その過渡期の間に、地元のつながりをつくるしくみとか人を呼び込むしくみとか、販売もそうですけれど、ReRootsでプロジェクトをいくつかやる状態になりますね。

農業のソフト面は開発できることがもっとたくさんある

—ここで新規で農業をやるという人は出てきていますか?

 まだないです。新規で入るというのが、今は非常に困難です。圃場がたいへんな状況で、ここを回復しないと畑になりませんから。また、ここは市街化調整区域なので、新しく家を建てることがだめなんですよ。市街地が向こうまで来ていて、ここにきれいな田園風景が残っているのは市街化調整区域が設定されているからというのはあるのですけれども、その一方で新規就農者が入りにくいという問題があるんですね。新規就農者は通い農のスタイルになるかもしれません。

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