業界自体がブラックであれば、根本的にはそれを変えていく方向性を持った支援が必要

—そもそもの制度や労働環境が不十分だと、支援もどうしても難しい部分はありますよね。

 もうひとつ問題としてあるのは、いわゆるブラック企業問題です。職場の問題でうつになって仕事を辞めて、失業状態に陥ってしまうというケースです。僕らの支援しているケースでもいらっしゃるのですけれども、前職で1日12〜13時間働かされて、働き方もきつくて、パワハラもあってとなると、あっという間にうつになってしまうんですよ。

 その方はデザイナーの方で、デザインの専門学校を出てスキルもあります。僕たちの支援は自分の強みを生かして就職しましょうという支援なので、デザイナーだったらそのスキルを活かして、その方向でやりましょうとなるんですけれど、ブラック企業にあたってしまった方だと、自信をなくしていたり、その業界に行きたくないとなってしまうんですね。学校にまで行ってスキルを培ってきたのに、ブラック企業に行って問題があったときにもうそこに行きたくないという状況があります。それが非常に問題だと思っています。

 就労支援は、被災と関係なくもともとある課題ではあるので、いろいろな方が来るんですね。いろいろな困難を抱えた方、職場の問題で来る方。業界自体が構造的にブラックだったりして、そこから来た人は転職するというのもひとつの選択肢ですけれど、根本的にはその業界自体を変えていくという方向性を持った支援をしていかなければならないと思っています。

 マッサージ、エステ関係の方からの相談が来ているのですけれど、そこもブラックなんですよ。本当に契約違反で、残業代は未払いだし、パワハラもあるし、ひどい職場なのです。入って2、3年でほとんど辞めちゃうという職場の方、5、6人から相談が来ています。

 そこで今、仙台の弁護士の方と相談して、そこは裁判をやりましょうという話をしています。自立支援や就労支援をする上で、その観点は非常に重要だと考えていて、一回不法行為を受けたときに、権利を回復するという過程を経て次の職場に行くということをやっていかないといけない。それは本人にとっても会社にとっても必要なことで、そういうふうにみんな辞めていく職場で誰も権利回復をしなければ、会社はどんどん同じことをやっていくんですね。それを是正させるという意味でもしっかり裁判をやるということの意義があるし、次にその職場に入っていく人あるいは職場に残っている人にも意義のあることだと思います。

 本人が権利回復していく作業をするというのは、そうしないと本人は自分を責めてしまうからです。あの会社を選んだ自分がだめだった、あるいはパワハラされたのは自分の能力が低かったからだと。そうではなくて、これは法律に違反している企業の問題だと、分けて考えないといけません。自分が悪かったのではなく、会社が違法行為していたのだと。裁判などの方法を取れば是正させることができるんだというふうにして次の職場に行かないと、気持ちがどんどん下に下に落ちていってしまうんですね。

 これは、これまでやってきた労働相談ともつながるところですね。権利を損害された場合は、それを回復させることのサポートも就労支援としてやっていかなければいけないと考えていて、実際にそういう事例もあり、裁判をやりましょうと動いています。そういうことも視野に入れて、ひとりひとりの課題に応じて支援していく。社会や会社の体質も変えていくことも就労支援の一環としてやっていくということです。

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